人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版 [山岳映画・アート]
新年、憑き物が落ちたような、さっぱりとした気持ちになりました。
まるで澄んだ青空の下、なにもかもから解放されたような。
死がせめぎ合うときの命の手触り。
「あんなに孤独感のある、スポーツは他にあるのか」
「あんな達成感は他のことで得られるのか」
自問自答しているような、二つの相反した言葉が、登山そのものを物語っていると思った。
安全な登山なんてないと言ったのはラインホルト・メスナーだったか。
危険で難しい課題だからこそ挑戦したくなるのだから、当たり前ですよね。
よく登山家や冒険家を命を粗末にしていると批判する人がいるが、それは命を粗末にしてるんじゃなくて、彼らにとっては生きていることを輝かせてくれること。
なかば自給自足の生活。登山家は第一線から退くと、大地に根を張るような生活に戻っていく人が多い気がする。自己責任でなるべく自力で生きようとする。こんなに他の生命ともども、命を慈しんでいる人たちっていないんじゃないだろうか。そして、人工的に作られた娯楽じゃなく、人に与えられた娯楽じゃなく、地球すべてが遊び場で自分で見つけにいく。
この単純明快でかつ力強い生き方がほんとに、いい!!
柔道、茶道、剣道などと同じ、どう生きるかという哲学を含めた道(どう)をあてがって、まさに登山「道」と評したい。
私の「好き」は、彼らの好きの足下にも及ばないように思う。満足するレベルが低いのだ。
彼らのような挑戦者がいるからこそ、人間の限界を知ることができる。そのことに純粋に尊敬してしまうし、自分では見ることのできない景色を見せてくれることが、単純にありがたい。
しかし人間というものは他の動物に比べて、肉体的には本当に不器用な生き物だなぁ…としみじみ思う。